PLCは読めるのにゼロから書けない?ラダー回路を作るための考え方と手順
- ラダー回路を見れば、何をしているかは何となく分かる
- でも、自分でゼロから作ろうとすると、何から始めればよいのか分からない
既存のラダー回路を読むことと、新しいラダー回路を作ることでは、必要な考え方が異なります。
既存の回路には、すでに接点やコイルが配置され、動作条件が回路として表現されています。
一方、ゼロから作る場合は、設備をどのように動かすかを整理し、その条件を自分でラダー回路に置き換える必要があります。
私はPLCエンジニアとして15年間、電気設計、PLCプログラム作成、設備立上げ、改造、トラブル対応などに携わってきました。
この記事では、三菱電機のMELSEC iQ-Rシリーズを使った簡単なモーター制御を例に、ラダー回路をゼロから作るための考え方と手順を解説します。
結論から言うと、ラダーを書く前に設備の動作と制御条件を整理することが重要です。
PLCのラダーは読めるのにゼロから書けない3つの理由

1. 既存回路には動作条件のヒントがある
既存のラダー回路を読むときは、すでに作成された回路を手掛かりに動作を理解できます。
例えば、モーターの運転指令を出している出力コイルがあれば、そのコイルに至る条件を調べることで、運転するための条件を確認できます。
しかし、ゼロから回路を作る場合は、どのような条件が必要なのかを自分で整理しなければなりません。
- 何をきっかけに運転を開始するのか
- どのような条件で運転を継続するのか
- 何が起きたら停止するのか
- 停止後はどのように再起動するのか
こうした条件を明確にすることが、ラダー設計の出発点になります。
2. 設備の動作を制御条件に分解できていない
「起動ボタンを押したらモーターを動かす」
これだけでは、ラダー回路を作るための条件として十分とは限りません。
例えば、起動ボタンを離した後も運転を継続するのか、それとも押している間だけ運転するのか。
この違いによって必要な回路は変わります。
また、停止ボタンを押した後、どのような操作で再起動できるようにするのかも決める必要があります。
設備の動作を説明できることと、その動作に必要な制御条件を整理できることは別です。
3. 回路を作る順番が決まっていない
ラダー回路の作成に慣れていないと、最初から接点やコイルを配置しようとすることがあります。
しかし、動作条件が決まっていなければ、どの接点が必要なのか判断できません。

そこで、私は次の5ステップで整理することをおすすめします。
ラダー回路をゼロから作るための5ステップ

STEP1|設備の動作を言葉で整理する
最初に、設備をどのように動かしたいのかを文章にします。
今回のモーター制御なら、次のようになります。
文章にすることで、必要な条件が整理しやすくなります。
実務では、設備仕様書や動作フローを確認しながら整理します。
仕様が曖昧な場合は、自己判断で回路を作成せず、設備の担当者や設計者に確認することが重要です。
STEP2|必要な入力・出力を洗い出す

次に、設備を動かすために必要な入力と出力を整理します。
今回の例題では、次の信号を使用します。
| 種類 | 信号 | 役割 |
|---|---|---|
| 入力 | 起動ボタン | 運転開始の指令 |
| 入力 | 停止ボタン正常信号 | 通常運転の停止条件 |
| 出力 | モーター運転指令 | 外部のモーター駆動回路への指令 |
実際の設備では、これらに加えて安全機能、過負荷保護、異常検出なども検討する必要があります。
STEP3|起動・停止・動作条件を整理する
入力と出力が決まったら、動作条件を整理します。
これらの条件を満たすために、自己保持回路と立上り検出を組み合わせます。
STEP4|動作をラダー回路に置き換える
条件が整理できたら、実際にラダー回路を作成します。
今回の例題では、次の機器と開発環境を使用します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| PLC | 三菱電機 MELSEC iQ-R |
| CPU | R04CPU |
| 開発ソフト | GX Works3 |
| プログラム | ラダー(LD) |
使用するデバイスは次のとおりです。
| デバイス | 用途 |
|---|---|
| X0 | 起動ボタン |
| X1 | 停止ボタン正常信号 |
| M0 | モーター運転指令の保持 |
| Y0 | モーター運転出力 |
X0は起動ボタンを押すとONになる入力です。
X1は、停止ボタンを押していないときにON、押すとOFFになる入力を想定しています。
M0は運転状態を保持する内部リレーです。
Y0はモーターの運転指令を出すための出力であり、モーターをPLC出力から直接駆動するものではありません。

今回のラダー回路は、次の考え方で構成されています。
この回路の論理は、次のようになります。
M0の次状態 =(X0の立上り OR 現在のM0)AND X1
X0を新たに押すとM0がONになります。
その後、X0を離してもM0自身の接点によってON状態を維持します。
X1がOFFになると、自己保持が解除されてM0がOFFになります。
Y0 = M0
M0がONならY0もONになり、M0がOFFならY0もOFFになります。
このように、運転状態の保持と出力指令を分けることで、回路の役割を整理しやすくなります。
なお、M0の保持設定や電源投入時の動作は、CPUパラメータや実際の使用条件によって確認が必要です。
STEP5|作成した回路の動作を検証する
ラダー回路を作成したら、想定どおりに動作するか確認します。
今回の例題では、GX Works3で作成した回路について、以下の動作を確認しています。
| 確認項目 | 結果 |
|---|---|
| X0の立上りで運転開始 | OK |
| X0をOFFにしても自己保持 | OK |
| X1をOFFにすると運転停止 | OK |
| X1をONに戻しても再起動しない | OK |
| X0を押したまま停止・復帰しても再起動しない | OK |
| X0を再操作すると運転開始 | OK |
また、電源再投入時に意図しない運転が発生しないことも重要です。
今回の例題では、運転状態を保持するM0のラッチ設定、入力信号の初期状態、立上り検出の挙動などを確認する必要があります。
ラダー回路を自分で作れるようになる練習方法
基本回路を理解してから作る
最初から複雑な設備のラダー回路を作る必要はありません。
まずは自己保持回路、タイマー回路、インターロック回路など、基本的な回路の役割を理解しましょう。
ただし、回路の形を覚えるだけでは十分ではありません。
その回路がどのような条件でON・OFFするのか、自分の言葉で説明できるようになることが重要です。
条件を1つ変更して考える
基本回路を理解したら、条件を一つ追加したり変更したりしてみましょう。
例えば、次のような練習です。
条件を変えることで、接点や命令の使い方だけでなく、回路全体の動作を考える練習になります。
回路を見ずに作成して確認する
最後は、動作仕様だけを見て回路を作成してみましょう。
完成した回路と自分の回路を比較するだけでなく、なぜその接点が必要なのか、条件が変わったときにどう動くのかを確認します。
PLCの学習方法については、以下の記事でも紹介しています。


また、基本回路を繰り返し練習したい方には、PLC学習教材も用意しています。
実設備に適用するときの注意点
今回の回路は、ラダー設計の考え方を理解するための学習用例題です。
実際の設備に適用する場合は、運転・停止の論理だけでなく、設備の安全性を考慮する必要があります。
例えば、非常停止、過負荷保護、電磁接触器の状態監視、電源復帰時の再起動防止などです。
通常のPLC入力で停止ボタンを監視する回路は、それだけで非常停止などの安全機能を実現するものではありません。
実設備では、リスクアセスメントを行い、必要な安全機能や保護回路を適切に設計・検証してください。
まとめ|ラダーを書く前に設備の動きを整理しよう
PLCのラダー回路は読めるのにゼロから作れない場合、命令を覚えるだけでなく、設計前の考え方を整理することが重要です。
今回紹介した5ステップを振り返ります。
ラダー回路は、設備に必要な動作を実現するための手段です。
まずは簡単な設備の動作を文章にし、必要な条件を整理するところから始めてみてください。

独学で進めていて、回路の考え方や設計手順でつまずいている場合は、オンラインコーチングでも相談を受け付けています。

